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「マイケアプランを作ろう」(長岡美代)
サンデー毎日 2000年7月16日号
介護保険現場報告 こんなモノはもう要らない〜マイ・ケアプランを作ろう

 本来なら、全幅の信頼を置かれているはずのケアプランが、不評である。「親身になって作られていない」という。ならば、ということでいま、自分で作ろうという動きが出始めている。だいじょうぶですか、ケアマネジャーさん?

 ケアプラン(介護サービス計画)といえば、ケアマネジャー(ケアマネ、介護支援専門員)に作成を依頼するもの。介護保険の仕組みを説明するパンフレットには、たいていそのように説明されている。お年寄りの心身の状況や要介護度を勘案しながら、本人や家族の要望を聞いて、必要な介護サービスを組み合わせた計画書がケアプラン。作成にかかる費用は、全額介護保険から賄われ、個人の費用負担は一切必要ない。
 しかし、厚生省が4月1日現在でまとめた資料によると、自分でケアプランを作成した人、つまり、「セルフケアプラン作成者」が、全国に4,474人存在するという。この数字、「意外に多い」と感じるか、「やはり少数派だ」と思うか。
「自分で作成する人は少数派ですよ。何しろ、ケアマネに頼んだって、費用はかからないんですから。それに、自分で作るとなると、書類の作成や介護報酬の計算、介護サービス事業者への予約など、事務処理が煩雑で、自作のメリットも考えられませんしね」
 と、ある自治体の介護保険担当者は、はっきりそう断言する。ちなみに、自分で作成する場合は、ケアプランを行政の窓口に提出するほか、「サービス利用票」「サービス利用票別表」などの書類を作成し、介護サービス事業者への予約手配も自らが行わなければならない。さらに1カ月が経過したら、サービスの利用実績を記入した「サービス利用票」を行政に提出。サービスを利用した場合にかかる費用は、ケアマネに作成依頼した場合と同じで、原則1割負担。残り9割分の介護報酬の請求手続きは行政が行ってくれる。
 難関は、要介護度別の支給限度額を意識しながら、約1,800通りもある介護報酬の中から、必要な介護サービスを拾い出すこと。ここまで聞くと、たいていの人は断念するらしい。では、一体、どんな人がセルフケアプランを作成しているのだろうか。
「ケアマネに頼んだが、手続きがなかなか進まないので、自分でやった」「良いケアマネが見つかるまで」
 という理由をよく聞いた。
 確かに、4月の介護保険スタート前には、「ケアプラン作成が間に合うのか」という話題で持ち切りだった。ケアプラン作成を引き受けてくれるケアマネを探すのに、苦労したお年寄りやその家族も多かった。だが、本当にそれだけが理由なのかーー。

生活を他人任せにしてよいのか

「介護保険で、高齢者はサービスを選択できるはずだった。しかし、現実には、自己決定をできる仕組みがどれだけ用意されているのか。例えば、ケアマネが所属する事業者は、介護サービス事業者を兼ねている所が多く、選択どころか、特定のサービスや事業者に誘導されかねない。ケアプランにしても、制度上、ケアマネが作成することが前提になっている」
 京都市社会福祉協議会の「マイケアプラン研究会」代表である、四天王寺国際仏教大学の小國英夫教授は疑問を投げかける。
「そんなら、マイケアプラン作成の手引きを自分たちで作成しよか」
 と、今では約100人の住民らがワークショップに参加し、手引きの完成に向けて検討を重ねている。今年秋頃には出来上がる予定だ。
 では、行政側はこの動きをどう見ているのだろうか。
「確かに、それも選択肢の1つでしょう。市でも、セルフケアプラン作成者のために、専用ソフトで書類作成のお手伝いをしています。ただ、作成後の心身状況などをフォローするには、おのずと限界はあります。いずれは、ケアマネに依頼していくのが良いのではないでしょうか」
 京都市介護保険課の荒木修生係長はそう言う。だが、その肝心のケアマネ自体の質を疑問視する声も聞かれる。
「ケアマネの質はまちまちです。ケアプラン作成の際は、高齢者の心身状況などを事前検討して課題を見つけ、その課題を解決するための目標を立てる。そして、その目標を達成するために、どんな介護サービスを利用したらよいか考えるというのが、ケアプラン作成の本来の意義。だが現実には、介護サービスが先にありきで、いかに要介護度別の支給限度額内に、サービスを組み込むかという作業だけになりがちなのです」
 そう指摘するのは、北陸学院短期大学人間福祉学科の國光登志子助教授。また、ある行政の介護保険担当者は、
「介護の現場経験の乏しいケアマネも多く、御用聞きのような、家族の要望のみに基づいたケアプランを作成しがち」
 と懸念する。
「お年寄りや家族の中には、゛すべてケアマネにお任せ″という人もいる。だが、自分の生活を他人任せにしてよいのか。自分でケアプランを作成することで、自らがどんな生活をしたいのかを考えるきっかけになるんです」
 小國教授は、セルフケアプラン作成の意義をそう語る。その結果、ケアマネが作ったケアプランの中身の評価にもつながり、「良いケアマネ」を見つけるきっかけになるかもしれない、とも言う。
 だが、現場のケアマネからはこんな本音も聞こえてきた。
「介護保険導入前のサービスを4月以降につなぐのに精いっぱいだった。本来は、高齢者の話を聞いて課題分析をする必要性を感じているが、現実にはそんな時間がとれない。作成書類は多く、請求事務など事務処理に追われがち」(埼玉県内のケアマネ)
 確かに、ケアマネが事務処理に忙殺され、お年寄り宅を訪問する時間がなかなか取れないという声は多く聞かれる。だが、「自分で考える必要のあるところは考え、専門家であるケアマネに任せるところは任せていけば良い」という先進的な意見を述べる人もいるのだ。ケアマネもそろそろ本腰を入れて、ケアプラン作成に取り組む必要性がある。そうでなければ、専門職としての存在意義が問われることになる。
(介護ライター・長岡美代)